彼の鯛焼きにはあんこが入っていない
くっそ‼︎
騙された‼︎
見知らぬ親父が、おいらを引っ掴む。
少し焦げのある鯛焼きは、やっぱり同じ運命を辿るのか。
もっと色んなことをしたかった。
けど。
なにかが物足りない。
それは、おいらたちを食べた人たちの笑顔。それに勝るものは何もない。
おいらは、目を閉じた。
涙が流れる目を。
親父が喜んでくれたらそれでいい。
それでいいんだ…。
「なんだ、アンコなしか」
親父が投げ捨てた。
投げ捨てたんだ。