ラブレッスン
気配を感じたのか後ろを振り返り私を見て微笑みかけてくる。





『由宇さん。居るなら声かけてくださいよ!』






昇った階段を下へと降りて来私の2、3段上の所で立ち止まった。






「私も今気付いたのよ。

今日も忙しいからお弁当だけ渡すわ。食べ終わったら休憩室に置いておいて。」





差し出したお弁当をジッと見て、手を延ばして来たと思ったらお弁当を持つ私の腕を掴んだ。






『由宇さんもまだ食べてないんでしょう?

ちゃちゃっと屋上で一緒に食べちゃった方がお弁当箱返すのに手間取らないです。』





私が自分のお弁当箱も持ってるのを見逃さないで言ってくる。






失敗したわ。先に休憩室に私のお弁当置いてから来れば良かった。





そうしたら昨日までのように、「デスクで食べたから」って断れたのに。






ここで断ったら避けてると勘ぐられるわよね。






何も言わずに私の腕を引いて屋上へと向かう結城歩。





腕を掴んだその手は、夏だと言うのに冷たく感じた。



私より体温が低いとかでそう感じるのかしら。



だから、余計に捕まれたその部分に身体中の熱が集中したみたいに、ジンジンと熱を帯びていくのがわかってしまう。




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