ラブレッスン
彼の手にあるしおりを掴みとろうとすると、意地悪するように届かない上の方へと手をあげられる。





「お願い返してっ!」





『くすっ。返しますよ?でもそんな真っ黒な手じゃ、汚れちゃうと思って。』





そう言われて手を見て慌てる。




暗い中でもわかる手の真っ黒さ。





『洗面所で手を洗ってからにしましょう。』





促されるまま結城歩と屋上を後にしてトイレへと向かった。











手を洗ってトイレを出ると、目の前の壁に寄りかかって待っててくれた。





スーツには私が手をかけて汚してしまった砂埃の汚れの跡。





『綺麗に洗いましたか?』




「ええ。」





そう言ってハンカチを渡す。





「その、汚してしまってごめんなさい。

拭いて取れるかわからないけど、使って?」





けれどハンカチには手を延ばさずに、両手でパンパンとスーツを叩いてほろってしまった。



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