ラブレッスン
『それは逃げなんじゃないのかい?』





「ーッ。…そうかもしれません。」





相田部長の言葉にハッとさせられ、思わず苦い笑みが出てしまう。






私は理屈付けてキレイな言い訳をしてるだけで、平たく言えば、これ以上辛くならないように逃げようとしているのね。






「私が私らしく生きていくには、逃げの決断が必要なんです。」






言った私の顔を無言で苦しそうに見つめる。



















一度ぎゅっと目を瞑って、大きく…深呼吸した相田部長。


瞑った目を開けたその顔は、仕事中に見せる上司の顔つきだった。





『…わかった。あとで人事に渡しておく。



人事にはプロジェクトに影響が出ないように、内密にするようにきつく言っておくから、遠藤さんもギリギリまで内密にしておくように。』







会議室を足早に出て行く相田部長の口調は、

上司と部下


それ以外は何もない淡々とした口調だった。





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