あゝ愛しの毒キノコ
「あの、深瀬。彼女さんとかは? 大丈夫なの? あたし怒られたりしない?」
結局、来てしまった。断ろうとは試みてみたものの、行きたくないあたしと行きたいあたしで、行きたいあたしの勝利。
深瀬の家っていうので身構えそうになったけれど、そもそもがあたしと深瀬はそんな成り行きでやってしまうような仲でもない。高校の頃から、よく部屋に行っていたのを思い出して、深瀬の家へとお邪魔することにした。
一人暮しをしている深瀬の家は、地元から30分ほど電車に揺られて、駅から10分ほど歩いたマンションの一室だった。
「怒られる相手がいればの話だろ。長谷川こそ、大丈夫なのかよ。まー、散らかってるけどどうぞ。パスタでいい?」
「あ、うん。何でもいいよ」
あたしだって、いないよ。言いそびれた言葉を、深瀬の背中に向かって呟く。言うほど散らかっていない、シンプルなリビングは、確かに女の人がいる感じではなかった。
気を遣ってるわけではないのか。あのとき相談されてた子とは、どうなったのかな。付き合ったという報告は聞かされていないから、その後のことはよく知らない。