あゝ愛しの毒キノコ


適当に座っててと言われたので、3つある座布団の1つを選んで腰を下ろす。テーブルに置いていかれた缶ビールに手を伸ばそうか、どうしようか。


あたし、ビールってダメなんだよなあ。仕事の飲み会でも、とりあえずビールっていうことができない。あの苦味を美味しいと感じられるほど、まだ舌が大人になりきれていないのかもしれない。

でも、目の前にあるのはビール。せっかく深瀬が出してくれたんだし、飲むべきかしら。素面でこの状況、ちょっと辛いのよね。


「ん、長谷川ってビール苦手? 梅酒もあるけど」


枝豆の入った小皿を置いた深瀬が、開いていない缶ビールを手にとった。

まあ、苦手なものを無理に飲んでも仕方ないか。素直にうなずいてから「炭酸ある?」と訊ねた。梅酒も、ロックでは飲めない。


「あるよ。氷いる?」

「うん。ありがと」

「とりあえず枝豆でもつまんどいて。今持ってくる」


どことなくぎこちないのは、7年ぶりだからだろうか。何を話せばいいのかよくわからない。だって、まだ好きなんだもの。

そんな相手にどう接したらいいのよ。向こうはただ、久しぶりの再会を懐かしんでるだけなんだろうけど。


こっちは違うんだもの。会わずにいれば忘れられるかもって、バカみたいに忘れられずにいて。


……会ってしまったら、10年会わなかったのなんて何にもならなかった。やっぱり、好きなまま。


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