知ることから始まるんだ!
朝食のお礼に明日奈は店でもらってきたコーヒーを千代に差し出した。


「まぁ・・・おいしい。
これは?」


「私の兄が経営しているお店で出しているコーヒーなんです。
私もお手伝いしているお店です。
よかったら千代さんもお店にいらしてくださいな。」


「ぜひ行かせていただくわ。
だけど・・・あなたのようにきれいな女性が幸樹坊ちゃんのそばにいてくれるなんて、夢のようよ。」



「私は・・・あの、話すと長くなるんですけど。」



「じゃあ、何も話さなくていいぞ。」



「先生・・・今日は大学に行くのではなかったんですか?」



「ちょっと忘れ物を取りにきただけなんだけど・・・やめた。
明日奈、今日は兄のところに行くのはやめて、俺とデートしよう。」


「はぁ!?(突然何のつもりよ!)」


「いいから話を合わせてくれないか。
千代さんがやってきてるのは、俺に見合いをさせるためなんだ。
頼む、話をあわせてくれ。」


幸樹は小声で明日奈に頼み込んだ。
その表情はかなり切羽詰まったようだったので、明日奈は思わず


「まぁ、どこに連れて行ってもらえるのかしら。
わかったわ、私も予定変更よ。
出かけましょう。」



「そうか。じゃ、すぐに支度をしておいで。」


「あらあら、幸樹坊ちゃんもそういう誘いをするようになったんですねぇ。
へんな緑色の生き物ばかりに話しかけているかと思ったら、いつのまにか成長されて・・・。
今度、旦那様と奥様にもお手紙を書いておかないと!

若いんですもの、いってらっしゃいませ。
とてもいいお嬢さんですし、幸樹坊ちゃんファイト!ですよ。」


「ああ、がんばってくるよ。」



幸樹の話にあわせて2人は出かけたが、明日奈は兄に店を休む理由を「幸樹のお仕事を急に手伝わなくてはならなくなったので・・・」と伝えた。


「ごめんなさい。先生とデートだなんて、兄さんは信用しないと思ってお仕事のお手伝いって言ってしまったの。」


「いいよ。俺も正直、デートって何をしていいやらわからん。」


「先生はデートしたことがないとか?」


「失敬な!俺も女性と付き合ったことくらい・・・数はそんなにないけど。」


「でも、弟さんも先生もけっこうイケメンの方だと思うけどなぁ。
自分が誘わなくても、まわりが放っておかないって感じじゃないかと。」


「ゴホッ!そりゃ、弟たちはほとんどそれだけどな。
俺はほら、見た目いちばんいかついだろ。
それに、親友が緑色だったりするしさ。
ほとんどの女の子はギャ~~~!って気持ちわるがるね。」


「あ、確かに・・・。」


「その点、君は幸太郎に優しく接してくれてる。」

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