知ることから始まるんだ!
勇気をくれる手紙
明日奈は再び、父のアシスタントとしてテレビにイベントにと多忙な生活を送ることになった。

父の書いていた料理本も売れ行き好調で、とくに友人と、恋人と、夫婦でと協力して料理を作ろうというテーマがよかったらしい。


「お父様、本の売れ行きすごいわね。」


「ああ、明日奈のいいヒントをもとに書かせてもらったんだよ。
明日奈が大家さんの彼と料理をしてると楽しいといってたろ。

ところで、彼は明日奈に家を出ていってほしくなかったんじゃないのか?」


「たぶん・・・でも先生に甘えるわけにはいかないの。
あのときはとくに、崇兄さんがお見合いするだけでも、動揺してしまってたし。
そんなときね、幸樹さんは1年後お互い成長して会おうって言ってくれたの。
だから、私、パパのアシスタントをしながら、そろそろ私なりの独立を考えてみようと思って。」


「明日奈・・・大人になったんだな。
おまえが父さんのアシスタントをやってくれると言ってくれたときは、甘えが残ってるかわいい子だと思っていたけれど・・・そうか。

母さんが亡くなって、子どもたちの成長こそが私に残された責任なんて言ってきたが・・・実際救われていたのは父さんの方だった。
しかし、明日奈が精神的に大人になろうとがんばるなら、父さんもそろそろ子どもたちから自立しなきゃな。」



それから1週間後、崇から電話があり、お見合いがうまくいって結婚を前提として相手の女性とお付き合いをすると連絡があった。


「写真を見た時から気に入ってたし、ほんとによかったわね。」


夕方になって秘書から郵便物を受け取った明日奈は1通の手紙をあわてて封をあけていた。



『お元気ですか?
テレビでの様子を見る限り、元気で楽しそうに暮らしておられるようですね。

俺は相変わらず生き物だらけの中で仕事をしています。
君が出ていったあとに、幸太郎にお嫁さんをもらうことにしました。

やっと相棒にも春を迎えてほしくなったんです・・・しかし、見た目いつもと変わりませんw
これを俺の人生の前進といえるのかどうかわからないけど、とりあえずそんなところからがんばってみようと思ったんです。

突然、手紙なんか送って、迷惑かもしれないけれど、君と離れてから妙な淋しさにたえきれなくて手紙を書いてしまった。
嫌なら破って捨ててくれてもかまわないよ。

俺はストーカーになるつもりはないからね。
でもストーカーの気持ちはかなりわかるようになったかも。なんてな。

ちなみに今夜は養殖マグロ三昧なんだ。
水産試験場の友人からいただきものがあってね。
うらやましいだろ!
君にも味見させてやりたかったけど、今夜は千代さんと智樹と和樹と助手たちとでいただくことにするよ。

こんな手紙でもまた送ってもいいかな。


夏川 幸樹 』



「いいなぁ。マグロ・・・。」



< 20 / 67 >

この作品をシェア

pagetop