知ることから始まるんだ!
明日奈は早速、父からお許しが出てアシスタント卒業することになったと幸樹にメールで知らせた。

幸樹は返信に

『お疲れ様でした。だね。明日奈の本気はみんなに伝わるよ。
アシスタントをやめてもこれからが大変だ。

俺は時間があればまた手紙を書くよ。
あ、でも困ったことがあったら電話でもメールでもしてきていいからな。』


と送ってきた。


「手紙・・・そうね。
手紙の方ががんばれる。
先生の字を見てるとうれしいから。」


明日奈は父の料理番組で、アシスタントをやめることを発表し、それは週刊誌にも大きく取り上げられたほどだった。

兄の崇も驚いたが、妹の優奈はわかっていたかのような口ぶりで


「お姉ちゃんは幸樹先生のお家にいってから、目覚めちゃったのよ。」

と言い放っていた。


「おまえの方が姉っぽいな。」


「何よ。お兄ちゃんだってお見合いして一目ぼれだったでしょ。
で、交際はうまくいってるの?
いってるんでしょう・・・鼻の下がのびてるもん。

そんな顔みたから明日奈はここにいられないって気持ちになっちゃったんだわ。」


「ちょ、ちょっと、俺が悪いのか?
俺は幸せを求めちゃだめなのかよ。」


「いいけど、お姉ちゃんはかなりのブラコンだったから・・・。
ちっちゃいときから、お兄ちゃんにくっついてたでしょ。
それに、きれいでかわいいからお兄ちゃんだって得意そうにねぇ。」


「得意そうに何?
けど、確かにそうだな。
お前と違って明日奈は優しくてきれいだから、妹だっていわなければみんながうらやましがる存在だったな。

まぁ、うらやましがられる反面、俺もなかなか彼女ができなかったわけだが。」


「いいじゃない、もう幸樹先生がいるんだし。」


「そうだな。いつも緑色っぽいのをいじってるのは不気味だけど、悪い人じゃないのはわかるさ。
明日奈のストーカー騒動も助手や後輩の学生たちに協力してもらっておさまったしな。」


「でもさぁ、幸樹先生ってもう30超えてるし、崇兄ちゃんより上だよねぇ。
そのうえ、明日奈は勉強するって・・・いつ結婚するのかしら?」


「そうだねぇ、それに幸樹さんのご両親は何ていうかな。
実業家でアメリカとか海外に住んでるんだっけか。」


「関係ないわよ。幸樹先生だっていい大人なんだもの。
そこまで親は関与してこないって。」



そして、明日奈は3か月かかって引継ぎをこなし、テレビの世界を離れ、幸樹の家へ行った。



「えっと、先生はお仕事で大学へ午前中はいってるから、今はいないんだったわ。
カギは持ってるし、いつもの部屋にいけばいいって・・・言ってたわね。」


ドアをあけ、明日奈は以前、住んでいた幸樹の研究室から見える部屋にいくと、部屋が殺風景になっていて驚いた。


「ここ、何かべつのことに使っていたのかしら?」



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