知ることから始まるんだ！

ピンポーン・・・



「はぁ～い！はっ、祥万さんたちだわ。」


「ただいま、明日奈！彼がライエルだよ。・・・明日奈？」


「どうしてあなたが・・・？布施リゾートのCEOがカメラマンのマネージャーなの。」


「やぁ、僕はまさか、こんなところで君に会えるとは思わなかったので、びっくりだな。」


「あ、ごめんなさい、ライエルさん。初めまして。」


「ほぉ、君が明日奈か。祥万からきいてたより美しい。
君の写真も撮らせてほしいな。」


「あ、とにかく、入って。
料理はどっさりご用意してあるので、食べてからお話をしませんか。」


そういって皆を居間に通してから、明日奈が台所に行こうとすると出口の前で男が明日奈の手をつかんで言った。


「君がフードコーディネーターをやめたときいて、どれほどショックだったと思ってる！
それも、行方を誰も教えてくれなくて・・・僕は途方に暮れたよ。
崇くんでさえ、教えてくれないのは男ができたせいだと思ってたけど、また会えたのは運命としか思えない。」


「や、やめてください。
あなたは優奈を傷つけました。

あなたとお付き合いできて喜んでた優奈にあなたは・・・・！」


「僕は君が優奈さんだと勘違いしてたんだ。
本物の優奈さんと会って別人だとわかったから、すぐに僕の好きなのはお姉さんの方だと言ったんだ。
誤解させておく方が失礼だろう？」


「でも、優奈はあの後・・・落ち込んでたわ。
初恋といってもいいくらいなのに。
今の彼の和樹さんがいなかったら・・・仕事の虫になってつぶれてたかもしれない。」


「で、君は妹に僕を押し付けたまま、こんなところでどんな男とよろしくやってるんだ？
いい機会だし、僕と付き合い直すのもいいと思わないか。」


「それはないな。
彼女は華やかな世界にもううんざりしている。
これからは、嘘と裏切りの多い人間よりも正直に生きてる動物たちに囲まれて生きるからな。」


「はぁ？もしかして、あんたみたいないかついおっさんがここの家主か？」


「いかついおっさんで悪いな。崇さんや優奈ちゃんからは俺が明日奈をよろしく頼むといわれている。
もちろんお父さんからもだ！」


「へぇ、そうなのかい。明日奈？」


「ええ。私、獣医の勉強しててここで先生のお役にたつんだから。」


「勉強なら僕が部屋を用意しよう。
もちろん、セキュリティも抜群にいい部屋だ。
学費も心配することはない。
将来的に、僕が海外にいるときも、祥万同様、仕事はできるからいいだろう。」


「何勝手なこと言ってるの？
私はあなたと付き合ったこともないし、妹の心を傷つけた憎い相手だとしか認識がないんだけど。」


「僕はどこにいても、明日奈がずっと好きだったよ。
だから、お付き合いができるってきいてすごく舞い上がった。
だが、約束のレストランに行ったら、君の妹だった。
年齢からしても、君が相手になるのは当然だろう？どうして妹になった！！！」


「それは・・・あの・・・。」


「ストーカーに追い掛け回されて、男が怖くなったんだよ。
触れられるだけで、失神してしまうほど、自分を見失ってしまったんだ・・・彼女は。」


「えっ・・・。それでか。君のスタッフにいくらきいても何も教えてくれなかったのは。」


「だから、警告しておく。
明日奈を乱暴に、引っ張ったり、抱き着いたり、すごんだりするな。
男の武器を決して振りかざすな。
もし、そんな素振りでも見せたヤツは、俺がぶっ殺すからな。」


「なっ・・・わかった。紳士でいるよ。
そういうことなら、僕もじっくり待つことにしよう。

だが、おっさんに負けるつもりはない。
明日奈にここで会えただけでも、今日のところは感激だ。それに事情もわかったし。
無理強いもしない。
けど、ここにいるとわかった以上、僕も日本にいる間、ここに居座ることにしよう。」


「おい、誰がそんなこと！！
ここは俺の家だぞ。
それに弟や親戚だって泊まるし、俺は一族の土地と家を守ってるんだ。
勝手なことはさせない。」