知ることから始まるんだ!
微妙な関係
布施輝彦と幸樹がお互いをにらみ合ったときだった。

「なぁなぁ、今日の主役は俺たちだぜ。
ごちそう食べて祝ってくれないか?」


「そうだよ。ライだってお疲れだし、早く食べよう。
おっさんどうしの話し合いは明日以降だってできるだろ。

明日奈だってこんなこまったおっさんたち相手にどうしたらいいかわかんないよなぁ。
さぁ、俺たちのために祝ってくれ。
行こう、明日奈。」


「はい。」


「お、おい、明日奈!!」


「ライ、祥万! おまえたち、僕の味方だろうが!!」


結局、輝彦と幸樹は険悪なまま、ライと祥万とのなれそめから、これからの話まで明日奈は聞かされることになった。


「すごい、ライは一目ぼれでずっと祥万にアタックしてたんだぁ!
で、祥万はどうして今までひとりだったの?」


「俺は高校までは親の言う通りに卒業したんだけど、大学行ってから何もかもが空虚感みたいなのに包まれちゃったというか、めんどくせえっていうか。
何がしたいのかわからなくなったんだ。」


「どうしてそうなっちゃったの?」


「俺は大学の先輩を好きになってしまって、先輩は普通の男性だったから、俺は気持ち悪がられて・・・おかしいっていわれて、それから前にも後ろにもすすめなくて。」


「そんなときだよ、ライが俺の前に現れてバシバシ俺の写真を撮るんだ。
嫌味かよ・・・ってそのときは思ったんだ。」


「ふむふむ。それで?」


「ライはおまえはとってもきれいだって。
俺ならおまえに好かれたなら、すごくうれしく思うな。って。」


「ライさん・・・すてき!」


「いやぁ、祥万はほら、きれいな顔してるだろ。
絶対女が放っておかないほどの顔をしてる。正直に言っただけだよな。」


「うん。」


「俺はモデルたちも写真撮ってるから、きれいなヤツに不当なことで泣いてほしくないとそのときは思ったんだけど。
その中でも祥万は俺がひきずってやれば、普通以上に元気に暮らせるんじゃないかと思った。
変な話なんだけどな。
祥万のあやうさは俺にとって、ググッときてしまってさ。」


「うわぁ。純愛だぁ!」


「そう思う?明日奈は実年齢よりも恋に恋する乙女だもんねぇ。
今も話をききながら目がキラキラしてる。
やっぱり、女の子はこうだよ。
ライ、俺は明日奈も連れていきたい。

こんなおっさんどうしの争いの中に置いておくなんてかわいそうだよ。」


「祥万さん!?」


「そうだなぁ。従兄弟とはいえ、輝彦の攻撃は金だけだしなぁ。」


「こらぁ!誰が金だけだとぉ。
人聞きの悪いこと言うなよ。
僕はこんな小汚い学者風情とは違って、気品も政治経済も小さな芸能ニュースにいたるまで、完璧なホテル経営者だ!」


「輝彦さんってホテル経営者だったの?」


「いや、いくつかの同族会社のCEOなんだけどね、僕はホテルの仕事が気に入ってるから。
ライのマネージャーもライが写真を撮る場所に3年後、ホテルが建つ予定になってたんだ。
自然をなるべくいかした方法で、いい意味のリゾートはできないか考えていたところだったんだ。」


「へぇ・・・まともな人だったんだ。」


「はぁ?」

「ぬぉ!」

「ぐぐぅ!」

「ぷぷっ!!!」
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