知ることから始まるんだ!
会場にシェフ姿で現れた男は、ペティナイフを明日奈の喉元につきつけた。


会場全体が楽しい会食パーティーから恐怖の場所に変わる。


「お、お願い・・・や、やめて・・・。」


「いやだね。ここで2人同じ傷を作って親密になっていくのさ。」




震える明日奈だったが、父の目が左に移動するような素振りを見せたため、明日奈はスッと左に動こうとした。



「おおっと・・・そういう・・・おわっ!な、なんだ!!くそっ、おまえが来てるとは!」



大きなマスクをしていたシェフが男のナイフを蹴り上げて、ナイフが床をすべりとんだ。


「兄さん!!」


明日奈を守ったのは、兄の崇だったが崇が男に殴りかかった瞬間悲劇は起こった。


崇の腕から血が流れている。



「明日奈!父さん、明日奈を連れて、早く逃げろ!」


「兄さん、だめっ・・・兄さんがっ!殺されちゃう。」


「俺は大丈夫・・・大丈夫だから・・・ううっ!」


血を見て興奮した犯人は崇の腰に小さなナイフをつきたてていた。


どうやら小さなナイフは複数持っているらしい。



泣き叫びながら、明日奈は病院へと移動させられた。

そして、20分後、救急車で崇が搬送されてきた。

崇は緊急手術のため、手術室に入っていった。

服は真っ赤に血で染まり、真っ青な顔をして運ばれていた。


搬送してきた医療スタッフと警察官の話からすると、もう一撃くらっていたら死んでいただろうと話していた。


「兄さん・・・私のために・・・。私をかばうなんて。
父さんとうまくいってないっていって明日、喫茶店をオープンするんじゃなかったの?」


「すまん、父さんが呼んだんだ。
崇には私の後を継いでほしかったが、あいつは料理を作るよりも、作った後のコミュニケーションを楽しみたいといってな・・・昨日許したんだ。
ボディーガード代わりにおまえのそばにいてやってくれと頼んだんだが・・・まさか・・・こんなことになるなんて。」


「兄さんを許してあげてたのね。
あれ?明日開店・・・って・・・兄さんあの体じゃ無理だわ。
お父様、あの・・・私・・・。」



「わかってるよ、崇の復帰するまでおまえが何とかしてあげなさい。
私は料理本の執筆があるし、出歩く仕事はしばらくないからな。」


結局、明日奈を追いかけてきた男は、昔明日奈とスタッフとして働いていた男で、明日奈と2人っきりになったとき、明日奈を押し倒して乱暴しようとしたため解雇された過去があった。

それからストーカーとなり、明日奈の近くに姿を見せるようになっていた。
注意はしていたものの、まさかパーティー会場へやってくるとは・・・みんな驚いていた。
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