知ることから始まるんだ!
住所と行き方を書いた用紙をFAXで明日奈は幸樹に送った。
そして、翌朝には幸樹と崇はたどり着いていた。


「人口の少ない島だな・・・。」


「俺もなんとなく場所は知っていたものの、実際に来たのは初めてです。」


そして2人を空港で迎えにきたのは、崇と同い年の男だった。

「はじめまして。僕は高梨慶吾といいます。
近々、明日奈さんと結婚する予定です。」


「なっ・・・!明日奈はどうしているんです?」


「明日奈さんは僕の息子をみてくれています。」


(子持ちだとぉ!!どうして・・・明日奈が。)


そう幸樹が思った途端、崇が慶吾に質問した。


「失礼ですが、高梨さんのお子さんと明日奈の関係を教えてください。」


「充は・・・あ、息子の名前なんですが・・・充は僕と明日奈さんのお母さんとの間にできた子です。」


「ってことは明日奈と充くんは姉弟なんですね。
で、どうしてあなたと明日奈が結婚なんてことになったんですか?」


「それは充が明日奈さんを気に入ってしまったことと、死んだ由紀奈さんの遺言でもあって。
あ、でも、永遠というわけではなくて、充がもう少し大きくなるまでのことで・・・その・・・明日奈さんは個人的にどう暮らしてもらってもいいというか・・・。」


「じゃ、明日奈があなたを愛しているわけじゃないんですね。」


「それは・・・あの・・・。」


詰め寄りそうな幸樹を制して、崇が慶吾に尋ねる。


「明日奈を気に入ってしまったんだね・・・あなたも。
だから、手放したくなくて、遺言を前に押し出した・・・。」


「いや、僕は・・・明日奈さんが嫌なら、僕は身をひきます。
でも、それをすれば明日奈さんにはお母さんから残されたものが一切手に入らないようになる。」


「明日奈のお母さんは何を残したんですか?」


「住んでいた家と多額の借金を。」


「どういう意味なんです?家を担保に借金したんじゃないんですか?」


「はい。家は由紀奈さんとご主人の思い出の場所で・・・彼女はそこには手をふれず、治療費を・・・。
僕が払うといったのですが、僕には息子を立派に育ててほしいといって。」


「そんな・・・それじゃ、明日奈は借金のために、あなたと?」


「僕は借金のカタに明日奈さんを無理やり、お嫁にもらったりはしません!
でも・・・正直いって、その申し出はうれしかった。」


「くっ・・・そんな。じゃ、明日奈が自分で・・・判断して・・・なんてことだ。」


「幸樹さん、とにかく明日奈に話をききましょう。
そのために来たんですから。」


「あの・・・あなたは明日奈の恋人なんですか?」


「あっ・・・俺は。」


幸樹は心の中で『俺は明日奈と結婚するつもりで同棲しています!』と叫んでいた。

崇は幸樹の代わりに、

「そうです。明日奈をストーカーから命がけで守って大切にしてくれた彼です。」


「そ、そうなんですか・・・。じゃ話をしなきゃいけませんね。
案内しますのでどうぞ。」
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