知ることから始まるんだ!
幸樹たちが帰宅すると、すでに輝彦とはるかは部屋を出て、輝彦の用意した部屋で結婚式が秒読みな準備をしているところだった。

そして、ライエルと祥万もあと2週間ほどで、出国するらしい。

突然やってきた充が幸樹の息子になるときいて祥万はとくに驚いたが、事情を幸樹からすべてきいた祥万は手をたたいて祝福するのだった。


「先生にしては上出来じゃないの。
ずっと胸につかえていたことをこんなきっかけで、はきだすことになるとはね。
ほんとによかった。」


「あまり、素直に喜べるまではいってないんだけどな。
明日奈は確かに入籍までは了承してくれたけれど、俺には愛情より感謝の気持ちの方が多そうだし、微妙なところなんだ。
すごく距離が縮んだと思ったら、また離れて・・・その繰り返しになってしまって、どうすればいいんだろうって・・・。
だめだな、年をとるとさ。」


「早い弱音だな。
その間に先生の弟たちは、ほいほいといい家庭を築いちゃってるんじゃないの。」


「そうだな。あいつらがうらやましい。
けどな、1つだけうれしいことがあった。」


「うれしいこと?」


「うん。充が・・・父ちゃんって呼んだくれた。」


「はぁ?それでいいのか。パパとかダディとか呼べっていわないのか?」


「彼の中ではダディは高梨慶吾になるらしいんだ。
なんといっても本当の父親だからな。
パパは今まで世話になった男すべてを指すらしいんだ。
で、俺のことははじめは『幸樹先生』って言ってたんだけどな・・・明日奈と結婚するって伝えたら、お父さんの意味の言葉ってないのかなっていうから、俺のことは父ちゃんって呼べって言ったのさ。」


「あははははは、幸樹先生らしいね。
どうやら、俺たちが日本を出ても充がいい方向に向けてくれるみたいだね。」


「だといいがね。
とにかく、明日奈はまだ学生なんだし、まずは目標通りの獣医さんを目指してもらうしかないな。
俺は、見守っていくだけだ。」


「あまりに保護者になりすぎるなよ。
明日奈は美人だから狙われるぞ。
守ってばかりいるのも、そろそろやめてもいいんじゃないかな。
彼女もじつは、待たない先生をのぞんでいるかもしれないしな。」


「俺は・・・彼女に怖がられたくはないんだ。」


「きっと大丈夫さ。
明日奈は大人だよ。何も考えなしに、入籍するわけないじゃないか。」


「だといいけど・・・まだそこまで付き合いが長いわけじゃないから。
婚約指輪をすっとばしたみたいで、申し訳ないけれど、少し待ってもらって用意しなきゃな。」


「ほんとに真面目だね。
俺は先生のそういうとこは好きだよ。
ただね、ときどきは求める行動がほしいよ。」


「えっ?」


「とくに君のぬくもりは感じていたいっていう行動がね。
大切にすると納得するのはいいことだけど、自分だけに言い聞かせてもいい結果にはならないよ。
だから抱きしめたり、キスしたくなる・・・だろ?」


「あ、ああ・・・。」
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