知ることから始まるんだ!
明日奈と幸樹が入籍してから、何かと幸樹の職場の先輩や同僚がよく遊びに来るようになっていた。

「ほ、ほんとにあの明日奈さんが先輩の奥さんなんて・・・びっくりです!
どういう出会いをされたんですか?」

と、芸能リポーターのような質問をされることが多いが、必ず最後にみんなが驚くのは、2人がまだ結婚式をしていないという事実だった。


「明日奈・・・ごめん。
君にふさわしい結婚式があげられない甲斐性なしな夫で・・・家を保持するだけでいっぱいなものだから。
エサ代や電気代もいるし・・・俺は・・・。」


「ううん、先生は気にしないで。
充を養子にしてまでがんばってくれたし、私だって先生が守ってくれたから今が自由にやっていけるのよ。
この上まだ、私のわがままなんて言ったらバチが当たっちゃうわ。」


「明日奈・・・。
あのさ、ゴージャスっていうのは無理だけど、
じつは職場の連中が、みんなで協力してくれて、大学の講堂で結婚披露宴をしてくれるっていってくれてさ。」


「えっ!!」


「うん。嫌か?」


「そんなことない。
皆さんがそこまでしてくださったのに文句なんて言うわけありません。」


幸樹はすごくうれしくなった。
「ずっと不安に思っていただろうに、君っていう人は・・・。
それとね、部屋のことなんだが。」


「部屋?私の寝室が研究室の隣っていうのが、何か問題なの?」


「いや、いいんだけど・・・あの・・・。」


「・・・???」


「別の部屋を改装して夫婦の部屋にしようかなぁ・・・って思うんだ。
ほら、研究室にはときどき研究員もくるだろ。
以前は、君はストーカーとか痴漢とか外敵から守るために研究室の横の方が守りやすいと思ってたんだけど、俺の妻になったのにそのままっていうのは・・・ちょっと・・・困るし、昼間は使用人たちとしゃべっていていいんだけど、夜はあの・・・2人で・・・誰にも邪魔されたくないし。」


「何の邪魔するの?」


「えっ!ぇええっ!!だからその・・・充にも弟か妹がいた方がいいかなぁって。」


「あっ!!ごめんなさい・・・私。」
(そうだわ、私はもう本当の奥さんだったんだわ。)


「うわっ、いや、焦らなくていいんだ。
無理強いなんていけないと思うし・・・。」


「ううん、違うの。
私そういうとこ、ぼんやりだから、イマイチ妻の自覚がなくて・・・大学での結婚式をお願いしましょう。
それと、結婚指輪だけでも用意してほしくて。
費用の面だったら・・・私も・・・。」


「いや、その指輪は用意してあるんだ。
婚約指輪だってバタバタしてて渡してなかった。
これ・・・俺の母の形見になるけど。
宝石部分以外のところは作りなおしたんだ。
嫌じゃなかったら・・・これをはめていてほしいんだけど。」


「まぁ!けっこうすごいダイヤじゃないの?
嫌なわけないわ・・・でも、こんな高価なものいいのかしら。」


「ああ、これからは今のオヤジは想像できないと思うんだが、旅好きの親父が動物や事業もそっちのけで夢中になった女性がいた・・・その証なんだそうだ。」
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