純愛デビュー
みんな名前を教えてくれるけど
正直そんなにすぐ覚えられなくて
終始微笑むあたしをみて
「がんばれカンナ」と
ゆりは隣でケラケラ肩を揺らしていた
「てかさ、カンナちゃんのこと男子がずっとみてるよ」
「えっ」
「うわ、やばっ。先輩とかも来てるじゃん」
気がつけばクラスの男子はもちろん
廊下にはたくさんの生徒が溢れかえっていた
「やっぱ美少女は違うなー」
「そんなんじゃないって」
「東京から来た美少女なんて素敵!」
「やめてよっ」
持ち上げられるのは好きじゃないし
褒められてもなんて返して良いかわからないから
正直注目を浴びるのは慣れたけど
好きじゃなかった
けどこうやって
同じ年のクラスの女子に囲まれて
笑顔で話せるそんな日がくるなんて
思っても見なくて
あたしは内心嬉しかった