純愛デビュー
しばらく涙が止まらなくて、
けどおばあちゃんはあたしが泣き止むまで傍にいてくれた。
「スイカ食べるかい?」
「....うん」
縁側に腰掛けて待っていると
スイカと「綺麗な顔が台無しだぁ」なんて
目を冷やす氷を持ってきてくれた。
「おばあちゃん、ここ海が見えるのね」
「そうだよ青く澄んでいて綺麗なんだ、行くか?」
「ううん。今日はもう疲れたからまた今度行く」
スイカを食べ終わり、立ち上がると
我が家のお手伝いさんの鷹野が立っていて
「お嬢さま!終わりましたので私はこれで...」
「ありがとう、お父さんとお母さんによろしく伝えて」
「かしこまりました、失礼いたします」
最後まで律儀に頭を下げて帰っていった。
...娘を見送るくらいお手伝いさんに任せないで
自分がすればいいのに
一連のやり取りをみていたおばあちゃんは
苦笑いをして部屋に案内してくれた。
「好きなように使いなさい、おばあちゃんはいつも縁側か裏の畑にいるからな」
「わかった」
和風な10畳ほどの大きな部屋に
不似合いな真っ白い家具。
ドレッサーに映された綺麗に化粧された自分
...こんなの、あたしじゃない。
丁寧に落としてくるくると巻かれた髪の毛もとかして
ベッドに横になると
ここにきてやっと本当に落ち着いた気がする。