純愛デビュー


「お腹すいた~」

昼休みになって

今日も3人、ゆりと葉月と机を合わせて

お弁当を開いた


「カンナどうよ~」

「えっなにが?」

「「早瀬くん!」」



2人揃ってニヤニヤしながらそういうと


教室が一瞬静まった


「ちょっと...2人とも声おっきいって...」



焦ってあたりを見渡すと


...一瞬窓辺にいる女子達に睨まれたような




「で!どうなのよ」

「いや、なんにもないって」

「え~うっそだ~」

「ほんと!それに...」

「それに!?」


2人が身を乗り出したとき


ガタン


と音がすると

あたしの横の席で相変わらず寝ていた彼が

立ち上がって教室から出て行った



思わずその姿でさえ目で追ってしまう...




「速水くんってクールだよねぇ」


「速水くん...?」


彼の出て行った先を見つめていると


聞いたことのない名前が

ゆりから出てきて


視線をゆりに向けた


「そ、カンナの隣の席の速水優斗」


速水優斗...


速水くんっていうんだ...


「速水くんの顔見たことある!?いつも寝てるけど...」

「まぁ...あるけど」

「イケメンだよねぇ!アイドル並みに整ってるから、密かにファンとかいたりするらしいけどあそこまでクールで一匹狼って感じじゃあ...ねぇ」


「誰も近づけずに今に至る!みたいな」


「...へぇ」


あれだけクールでいつも寝てて

俺に近づくなオーラ出てたら


さすがに近づく人もいないのかぁ



「まぁ彼女もいないし、女に興味ないってウワサ!」

「そう...なんだ」


なんか少し、安心した

なんでだろう

あのくりっとした目で

低くかすれた声で...



あんなの目の前にしたら

誰でも好きになっちゃうっていうか


だから...それは嫌だなって



あたし、何考えてるんだろう


けど女子に興味ないんじゃあ

あたしが話しかけるのでさえ嫌かもしれないよね...



でもなんで今朝


あたしの席に座っていたんだろう?





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