純愛デビュー


「拓真に近づかないでよ」

「なんで?」

「むっむかつくの!粋がんないで転校生のくせに」


「拓真と付き合ってないよね?」

「それは...」

「なら言う資格ないんじゃないの?」



すると顔を赤くして


唇を噛み締めた理恵ちゃんは


ぐいっとあたしの髪の毛を掴んだ



「この栗色の毛も、その大きな瞳も長い睫毛も赤い唇も!全部がむかつくんだよ」

「いたい...離して」

「こんなの...不公平!ずるい、アンタみてるだけでムカつく」


すると理恵ちゃんは胸ポケットから


かみそりを出した


...あれ、こんなこと前にもあった



少し忘れかけていたあたしの嫌な記憶が


少しずつよみがえった途端


抵抗も出来ないくらいに体が固まって


唾を飲み込んだ


「...やめて..」


「アンタのこの髪なんてこれで...」


理恵ちゃんが恐ろしい形相でかみそりを


あたしの長い髪の毛に近づける


「やだ...やめて....」



ッ....!!!!!!


そのとき


バッと理恵ちゃんのあたしの髪の毛を掴む手が

叩き落されて


勢いであたしがその場に転びそうになったのを


「...えっ」


支えてくれたのは

もう、見間違えるはずもない


「速水くん...」


「大丈夫か」


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