純愛デビュー
夏祭り
「もうあと1週間で夏休みじゃん!?」
放課後の小さなカフェテラスで
淡いピンク色のアイスクリームを
頬張る葉月が口角をあげてそう言った
長かったロングヘアも今は
高い位置でポニーテールをしている葉月は
相変わらず多田君とラブラブ
「ってことは....」
「「夏祭りじゃん!!」」
ゆりと葉月の大きな声、
嬉しそうな表情が
突然メロンソーダを黙って飲んでいた
あたしに向けられた
「そうなんだ」
「なんだ~カンナ祭り嫌い?」
「いやそういうわけじゃないけど」
じゃないけど...
友達と夏祭りなんて
そもそも行った事がない
地元である祭りなんて
そこらのヤンキーが集まるだけだって
お父さんが行かせてくれなかった
だからあたしはいつも無駄に広い家の庭で
お母さんが買ってくれた浴衣を着て
一人で花火をみるだけだったから
正直いやでもないし、
そもそも楽しかった思い出なんてない
「今年は50周年で花火がすごいらしい!」
「そうなの?あたし慶と行く」
慶くんは多田君のこと
そんな幸せそうな葉月をみてから
ゆりはあたしをじっとみた
「カンナはもちろん早瀬くんと行くんだよね??」
「えっ行かないよ」
そもそも約束なんてしてないし...
「なんでよー勿体無い!誘いなさいよ」
「いいよ、あたしゆりといく」
「...いや、そんなこと言うの反則。カンナ可愛すぎて無理」
「ひっひど!」
「だ~か~ら、早瀬君と行くんだよ!」
「早瀬君だって、カンナのこと好きそうだし。そのうち誘われるでしょ」
「えっそうかな」
葉月は余裕な顔で うんと頷く
「てかホラ、この間告白された先輩はどうなの!」
「あっ...断ったけど」
「え~勿体無い!中々イケメンなのに~」
実はこの前
話したことのない先輩に
告白された
けどあたしは二つ返事で断った
だって...
あたしが好きなのは速水君だから...