純愛デビュー
「ただいま」
「あらカンナ早かったねぇ」
家に着くとおばあちゃんは
庭でスイカを食べていて
食べるかい?と聞かれたけど
パスタをもどしてしまいそうで
断ってからおばあちゃんの隣に座った
「明日は夏祭りなんだぞ~知ってたか?」
「うん、友達と行くつもり」
「あらそうかぁ、浴衣着るんだろ?」
「いや...あたし、浴衣持ってないから」
毎年新しい浴衣を新調するのが
当たり前だった。
年に1度の祭りの日
庭で花火を見るだけの為に...
だからここには持ってきていないし
もちろん買ってもいない
するとおばあちゃんはしばらく
考えてから"あっ"と声を上げると
軽い腰を持ち上げて家の置くに入っていった
少しすると「あったよう」
嬉しそうなおばあちゃんの手には
黒地に白で綺麗な花の入った浴衣。
「これ...どうしたの?」
「美和子の浴衣だよ」
「えっ...お母さんの?」
美和子っていうのはお母さんの名前
それにお母さんは高校卒業して上京したから...
ってことは数十年前?
それにしてはそんな風に思えないくらい
綺麗で...繊細なつくりのまま。
「これ1回しか着てないから勿体無くて取っておいたんだぁ」
「着て...いいの?」
するとおばあちゃんは「もちろんさぁ」
と嬉しそうに微笑むと
浴衣をあたしの肩にそっとかけた
「美和子の子供が生まれたら着せてあげようって思ってたんだぁ、だからばーちゃん嬉しいよ。カンナに着せてあげるときがきて」
「ありがとう...あたしも嬉しい」
お母さんの浴衣を着て
お母さんも行っていたお祭りに行ける
あたしにとってその事は
ここに来て1番嬉しかった