純愛デビュー
「寝てたのかい?もう少ししたらおじいちゃん帰ってくるよ」
居間に行くとおばあちゃんが
美味しそうなご飯を並べいた。
久しぶりに食べる手作りのご飯...
ひんやりとした畳に座って
縁側に目をやると
遠くのほうに見える海に夕日が反射して
キラキラしてる
「学校はいつからだい?」
"学校"
その言葉にふと我に返った。
...そうよ、学校に行くんだ。
でも大丈夫、あそことは違うはずだから
ここに来るまで何度そう言い聞かせただろう
不安で不安で仕方なくて押しつぶされそうな心を
今までも自分でなんとかしてきたんだから
「おばあちゃん、学校は明後日から。」
「そうかい、じゃあ明日でも1回行ってみなさい。家出て左に直線だから分かるとは思うけども一応ね」
「...うん、そうしてみるわ」
そのときガラガラと玄関の引き戸が音をたてると
「おぉ、カンナもう来てたのか」
おじいちゃんが相変わらず優しく目尻を下げて
帰ってきた。
「おじいちゃんごめんね、お世話になります...」
「いいんだよ、大変だったな。こっちでのんびり過ごせばいい」
おじいちゃんはあたしの肩をポンッと叩いてから
また優しく笑った。
...おじいちゃんも、おばあちゃんもいる。
今のあたしはもう1人じゃない。