純愛デビュー
昨日トラックで通った細長い田舎道は
どこを見ても田んぼと緑の自然
先を見れば山と海。
なまぬるい風がスカートの裾をゆらして
たまに抑えながらもゆっくりと歩く
なんだか世界が違うみたい
毎日見ていた高い高層ビル
夜になると光りだすネオン街
ここでは建物の光なんかじゃなくて
夜空に綺麗な星が見れそう
歩いて15分くらいすると
田舎らしいいい意味で古い学校に到着した
高い門や柵、エレベーターなんてまるでなくて
広いグラウンドと芝生があるくらい
グラウンドに目を向けてみれば
炎天下のしたサッカーボールに群がる生徒が
走り回っていた
あたしはそんなサッカー部らしき彼らの
横を通り過ぎて
職員室へ向かった。
一応、挨拶にと。おじいちゃんが言うから仕方なく
静かな涼しい廊下は木造のところもあって
歩くたびギシギシと音がするのは
なんだか心地よかった
コンコンとノックをして中に入ると
数名の教師が一気にあたしに目を向け
あたしがキョロキョロしていると
ふくよかで優しそうな女性が近づいてきた
「もしかして白石さん?」
「あ、はい。明日からお世話になります」
「こちらへどうぞ」
案内されるまま奥の部屋に入ると
「校長の田中です」と手を差し出してきた。
あぁ、校長先生がこの人なんだ
前の有り余った資産でなんとなく建てた
大金持ちに支配されているような校長とは別人。