短編集
桜がヒラヒラと舞い散る季節に入った。
電車内の人間模様も変わってくる。
私の前に座るおじ様が、いなくなった。
今、そこに座っているのは…二十代後半の爽やかな男性。
本を読んでいた。
カラーシャツに、オシャレな柄のネクタイ。濃紺のスーツに革靴。そして、同じく革のかばん。
ヤバイ。
ど真ん中だ。
私のストライクゾーン。
わざわざ色恋物語を読まなくても、目の前の人を眺めてるだけで十分空想の世界に入っていけそうだと思ってしまった。