短編集
目の前の彼は、私が乗る駅よりも前に乗っていて、私が降りる駅の一つ手前で下りていく。


彼の広げる本は、厚みがあったり、薄かったり、はたまた大きかったり…と様々だった。


でもきっと、難しいものを読んでいるはず。

だって、いつも真剣に考えてるような仕種ばかりだから…。







ちょうど二週間くらいたった頃だろうか、お互いに軽く会釈をするようになった。


私が乗り込んだ時と、彼が降りる時の二回。


心が和む瞬間だ。
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