ヒスイ巫女3
ヒスイはその言葉通り蛍の心の中にいた。
その中にはいくつもシャボン玉のような泡がありその1つにヒスイが触れた。
すると脳内に蛍と初めて出会った時の記憶が流れてきた。
この蛍の中は記憶が詰まっている大事な思い出も思い出したくない記憶も。
その中にひときわ大きい黒い泡があった。
その中にうっすらと人の形が見えた。
ヒスイがその泡に触れると身体が中へと吸い込まれた。
泡の中には蛍がブツブツと何かを話していた。
「蛍?大丈夫?」
ヒスイが心配して蛍に近づくと蛍はヒスイを見て震え始めた。
ヒスイはそんな様子をみて少し離れた所に座った。
「蛍はさ…私の事本当に好きなの?」
蛍はうなずく。
「蛍は私のどんなところが好きなの?」
「・・・優しい所」
ヒスイは微笑みながら
「それは私を友達として見た時に思う事じゃないの?」
「違う!俺はお前が…好きなんだ!」
蛍は急に立ち大声をあげた。
「蛍は恋愛の相手として私が好きなの?」
「そうだよ!俺はお前と会った時からずっとずっと好きなんだよ!」
「蛍、それは無理だよ。」
「え……」
「だって蛍。昔から友達いなかったでしょ?だから友達か好きな人か分からない。そうじゃない?」
「そうじゃない!」
蛍はヒスイの肩を揺らした。
「俺は昔から友達はいなかった!だが恋か友情かそれぐらいはわかる!」
ヒスイは蛍を冷たい目で見た。蛍の動きが止まった。
「蛍?私はどんな事があっても蒼以外の人を好きにならないの。これは絶対に崩れない。」
「どうして!ヒスイはいつもいつもいつも!兄貴を選ぶ!どうして?俺はお前がこの世で一番大切なのに!」
「蛍が私を想うように私は蒼に想ってるの。」
ヒスイの冷静な言葉に何もいいかえす事が出来ない。
「じゃあ…俺はお前の何なんだ…」
ヒスイはきょとんとして当たり前のように言った。
「親友だよ。」
「え?」
「この世で一番大切な親友」
蛍の心の中で何かが溶けていった。
いつも持っていた一番になりたいと思う気持ち
それをヒスイは簡単に溶かした。
蛍が目を覚ました時蛍には新たな力が目覚めていた。
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