アイザワさんとアイザワさん

商店街の入り口、アーケードの道路を挟んで向かい側に、ここ、羽浦市イチ有名なカフェがある。

お料理やケーキも絶品だけど、オーナーがイケメンで、私はオーナー目当てで密かに通っていた。木村くんが『Felicita』で働いてくれたら、オーナーに紹介してもらえるかも……

しかし、そんな私の邪な思いは届かなかった。

「あ、そんなおっきいとこじゃないっすよ。」

……残念。

「じゃあ、どこなの?」

「ここからもうちょい行ったとこです。……なんだっけ?ミルク、みたいな名前の店。」

「呆れた。働く店の名前も分かんないで面接してもらったの?」

「昨日その店の前通った時『スタッフ募集』って張り紙見つけたんすよ。で、話聞こうと思って店入ったら、『君、可愛いから採用』って。あっという間に決まっちゃいました。」


確かに木村くんは可愛い。くるくるとした黒目が可愛らしいパピヨン犬のような顔立ちだ。
こんな弟がいたらメロメロだろう。しかし、私は可愛い系はタイプではない。


「初花さん遊びに来てくださいね。……パティシエのお兄さん、超イケメンでしたよ。」


「……絶対行く!!通う!!通いつめる!!」


そう。私は、イケメン好きなのだ。
ちょっと好き、ってレベルではない。
足元にひざまずいて言うことを何でも聞いてしまいます!ってレベルのイケメン好きだ。
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