アイザワさんとアイザワさん
臆病なライオン。 ー樹sideー
エリア会議の翌日。
自分の部屋に戻った俺は、昨日のことを酷く後悔していた。
意識を失う前に「誰…なの?」と彼女が呟いた小さな声が頭から離れない。……思わず口にしてしまったんだろう。
俺はその言葉を聞いて、逃げるようにアパートを出た。
……思い出してもらえないことが、こんなに苦しいことだとは思わなかった。
どうして俺は彼女のそばにいられるだけでいいなんて思っていたんだろう。
彼女を壊してしまうかもしれない。そう思っても抑えられなかった。
「興味がある」なんて嘘だ。
そう言い訳をしないと触れることもできない。
俺は、最低だ。
***
トントン、とドアがノックされる。
ノックなんかしなくたって、誰が来たのかは分かっていた。
「入れよ」
と声をかける。
部屋のドアが開いた。
「樹、戻ってたんだ?……会議どうだった?」
「どうだった?……どうせ叔父さんから俺の様子を見とけ、って言われて来たんだろ?」
「それはそうなんだけど……樹、なんて顔してるんだよ。……何かあったな?」
顔をのぞきこまれて、思わず目を反らした。
こいつの何もかも見透かすような視線が耐えられなかった。
『何があった』なんて、どうせ言わなくても分かってるんだろ?
……俺たちは双子なんだから。