アイザワさんとアイザワさん
『人生は面倒だ』
そう思ったのは、俺が10歳の時だ。
双子に生まれて、先に生まれた俺は『兄』だったけど、小さい頃から可愛らしくて活発な弟の瞬(しゅん)といつも比べられて育ってきた。
明るくて、気さくで、誰からも好かれる弟。
俺は兄なのに、いつも『二番目』だった。
それでも何とかしてやろう、とか悔しいとか、そんな意地はひとつもなかった。
意地も無ければ、努力もしない。執着もない。
『こんなもんだ』と思えばそこそこの自分でも生きていけるような気がした。
俺は、10歳で人生を諦めた。
自分の容姿が多少整っているのは自覚していて、それを利用して遊んだこともあったけどすぐに飽きてしまった。やっぱり、俺には夢中になれるものが無いらしい。
飽きてしまうと、途端に人と……女と関わるのが面倒になった。
二卵性の双子だから、容姿はあまり似ていなかった。
だから、性格だって似ていなくてもいいだろう。
『社交的』な瞬と『人付き合いが苦手』な俺。そういう双子になるために、自分を変えることにした。
遠視だったから、矯正用の厚いレンズの眼鏡は黒ぶちでセンスのないもの。髪は伸ばしっぱなしでボサボサ。服装にもあまりこだわらない。
そんな自分をつくりあげた。