アイザワさんとアイザワさん
「ほんと、樹はバカで不器用だね。」
瞬が呆れたように言った。
俺だってそう思うよ。お前のように器用に生きられたらどんなに楽か。
「で……やっちゃったの?」
……やっぱり、お前にはなりたくない。
黙りこんだのを『肯定』と捉えた瞬は俺にこう言った。
「だったらさ、何でそんな苦しそうな顔してるんだよ?好きだったんだろ?ずっと。何やってんだよ、いつまでも。」
「もっと楽な『恋』しろよ。正直、見てられないんだよ。……叔父さんだって、親父だって口には出さないけど心配してんだよ。」
心配?……心配してるんじゃなくて、俺がだらしないから見張ってたってだけだろ。
楽な恋?何言ってんだよ。
恋なんて、ちっとも楽じゃないし、楽しくもない。俺にとっては、いつも辛くて苦しいだけのものなんだよ。
そう思って逃げたいのに、俺は結局諦められないんだ。
俺は……相沢 初花のことが好きなんだ。