アイザワさんとアイザワさん
12月。①変わっていく関係。
先日、俺は相沢 初花に想いを告げた。
別に彼女に想われてると期待してた訳じゃない。
でも、あんな風に泣かれるほど後悔しているとは思わなかった。
俺だって後悔している。揺れている相沢の気持ちに気づきながらその気持ちにつけこむように無理やり抱いてしまったことを。
あの日、まだ生方馨のことを忘れられないと言っているかのような彼女の表情に動揺した。
でも、俺のことが誰か分からずに混乱している気持ちの中でも「ありがとう」と言ってくれた。
弱々しいのに、でも必死に自分を保とうとしている彼女を見ていたら、自分の中の何かが音を立てて壊れていったような気がした。
あぁ……理性が無くなっていくってこういう感覚なんだ……俺は生まれて初めて『理性が飛ぶ』という気持ちを知った。
それまでは……記憶も気持ちも少しずつ俺のほうを向いてくれればいい。そう思っていたのに。
俺は、自分の欲にあっさりと負けた。
後ろめたさに目を合わせることも出来なくなった。……嫌われて当然だ。
逃げずにちゃんと想いを告げればよかったんだ。彼女に泣かれた時だって、好きになったのは今のお前じゃないと。そう口にしてしまった。
俺はこの期に及んでもほんとの気持ちを口に出すことが出来なかったんだ。