アイザワさんとアイザワさん
「お待たせいたしました」
『ヤ』の付く人と超イケメンの登場です。
翌日。
店に程近い、とあるマンションの一室。
私と茜さんはその中で緊張しながら座っていた。
ここは新しい経営者が借りているマンションで、事務所、らしい。
生方のおとうさんから聞いた話だと、新しい経営者の方は羽浦市内のいくつかのコンビニと、居酒屋と、不動産とを経営しているらしい。
多角経営って言うんだっけ?こういうの?
なので、こういう仕事の為の場所、というのは必要なのだろう。
私達の緊張感は別のところにある。
目の前に座っている男……新しいオーナーに対しての緊張感だ。
さっきから私たち二人が抱えている思いはたぶん一緒だ。聞きたい質問は、二つある。
①えーと……この事務所、○○組って名前付きます?
②あなた……『その筋』の方じゃないですよね?
それだけ、目の前のオーナーは『まんま』な風貌だった。恰幅のいい体格に、角刈り、色の入った眼鏡、派手な色柄シャツ……
私達はほんとうに、何処かとんでもない所に売り飛ばされてしまうんじゃないだろうか?
「……まあまあ、そんなに固くならないで。」とオーナーは言った。
……いやいや、無理でしょ。