アイザワさんとアイザワさん

彼女はあれ以来、仕事以外の時間はなんとなくぼんやりとしていることが多くなった。

今も目の前にいるのに、生気のない表情で、まるでこの世にいない人のようだ。


たぶん、過去の記憶を巻き戻しているんだろう。揺り戻されてもいるはずだ。


スタッフ……特に柏谷さんがそんな相沢を心配しているのも、泣かせてしまったあの日以来、俺を非難するような視線で見ているのも知っている。



それを知りながら側にいることも出来ない。


俺には君を支える権利が無いんだ。


……翠さんが壊れていくのを知りながら、気づかないふりをした俺には。


……君は、まだその事を知らないから。
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