アイザワさんとアイザワさん

ほら、とそのままコーヒーを差し出してくれる。

「あ、ありがとうございます……」

気を遣わせてすみません…そんな感じで目を合わせると、

「柏谷さんが怖すぎて……ちょっと逃げて来た。」と相澤が困ったように言った。


今日の朝日勤は相澤と茜さんだ。
私達のことは、ただのケンカじゃないと理解してくれてはいるようだけど、「初花ちゃんの味方よ」と言ってくれた茜さんは、相澤に対してずいぶんと怒りを感じているようだった。


「茜さんと比べたら私のほうが気まずくないんですね……」


思わず口にしてから、しまったと思った。これはかなり嫌みに聞こえたはず……。


相澤は、はぁ…とため息をつきながら言った。


「お前とだって、気まずいに決まってんだろ。……でも、そんな事を言えるくらいならもう大丈夫だよな。顔色も良くなってきたし。」


そして「この前は言い過ぎた……泣かせて悪かった」と謝ってくれた。


そして「あのさ……全部、思い出したのか?」と言いにくそうに聞いてきた。



はい。思い出しました。
……あなたのことも全て。

そう言おうとしたその瞬間、



相澤がはっと何かに気づくと、表情を曇らせて防犯カメラのモニターに目をやった。


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