アイザワさんとアイザワさん

『母親』は、私を玄関から追い出すと、二階の私の部屋へとかけ上がっていった。


私の部屋の窓から、次々と私のものが降ってきた。


おばあちゃんから買ってもらったぬいぐるみも、家族の写真を入れたアルバムも、服やカバンまで、まるで雪のように降ってきた。


それを私はどうすることもできずにただ眺めていた。


お母さんは、私のいた時間の全てをこの家から無くそうとしている……。その事実に心は砕け、私は何も考えられなくなった。



……どれくらい時間が経ったのか、気がついたら私の横に源ちゃんが立っていた。近所の人が見かねて教えてくれたようだった。



源ちゃんは、ただ黙って私の荷物を拾い集めてくれた。


私も泣きながら、思い出を一つ一つ拾うように荷物を拾い、カバンに詰めた。



こうして私は20歳で『家族』を失った。
< 142 / 344 >

この作品をシェア

pagetop