アイザワさんとアイザワさん

家を追い出されてしばらくは、源ちゃんの家に身を寄せた。


その頃の記憶は、全て思い出した今でもぼんやりとしていて、夢の中にいるみたいだ。


深い深い闇の中に落ちて、私は何度も自分を責め続けた。無意識におばあちゃんの後を追うようなことも何度かあったらしい。


源ちゃんが見かねて大先生のところに通うように勧めてくれ、連れて行ってくれた。


馨さんは何度か私の様子を見に来てくれたけど、私はどうしても会うことができなかった。


この時私がもっと強ければ……私達はあんな終わりかたにはならなかったはずだ。



お互い想いを残しながら、それでも一緒にはいられず、馨さんは悩んだ末に以前から話があった本社への誘いを受けて、私の側から離れていった。



大先生は、私に心をコントロールする方法を根気強く教えてくれ、若先生は明るく励ましてくれた。だけどレオ先生は何故かクリスマス会の日以来、姿を見ることはなかった。


治療は半年ほど続き、私は学校を卒業することなく辞めた。


心もだいぶ落ち着きを取り戻した頃、生方のお父さんから、うちでずっと働かないかい?と勧められた。


馨さんを傷つけて、半年以上も仕事も出来なかった私が、これ以上迷惑をかけるわけにはいきません。そう言う私を、玲子お母さんは抱き締めてこう言ってくれた。
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