アイザワさんとアイザワさん

この時の私は

『清く』も『正しく』も『美しく』もなかった。

それからの私はおばあちゃんが残してくれた言葉を『魔法』だと思いながら……思いこみながら、『清く、正しく、美しく』なろうとした。


『魔法のコトバ』は、懺悔の言葉。


後悔を一つ一つ消し去るように言葉を繰り返して、私は『細かいことを気にしない』『前向きで明るい自分』を作り上げていった。



そんな自分の内面を気づかれるのも、暴かれることも全く予想していなくて、相澤が私の内面に近づく度に動揺していた。



ほんとうの私に気づいたのは相澤だけだ。



いちいち傷ついて心の中で涙を流して、ボロボロで立っていられないほど弱い自分に。


私だって長い時間をかけて、今ようやく気がついたのに。



こんなに弱い自分でも、相澤は好きだと言ってくれるだろうか?



私は……相澤に側にいて欲しいと思っている。


ただ……私の側にいて欲しいんだ。





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