アイザワさんとアイザワさん
②そばにいて欲しいんです。
源ちゃんが運ばれたのは、市内の総合病院だった。
家族が病院に来たから、と一旦コンビニに戻って来た相澤は、シフトが終わるとそのまま私を病院まで送ってくれた。
「ほとんど仕事変わってもらって悪かったな。連絡もありがとう。お孫さんが来てたよ。」
恵梨ちゃんが行ってくれたんだ……。
さっき電話した時は動揺してたから、大丈夫かなと思ってたけど。
「お前は、大丈夫か?」
相澤が心配そうに聞いた。
「……大丈夫です。思ったより動揺しなくて……私、冷たい人かもしれないですね。」
と私が苦笑しながら言うと、
「何言ってんだよ。あれは、冷静だったんじゃなくて『副店長』として『正しい』対応をしようとしただけだろ。源次さんの意識が無くなりかけた時、青ざめてたじゃねぇかよ。」と言ってくれた。
相澤はもう源ちゃんのことを『源さん』とは呼ばなくなっていた。昔のままに『源次さん』と呼んでいた。
相澤は運転しながら左手を伸ばして、膝に置いていた私の手をそっと握ってくれた。温かくて柔らかなその手の感触で、私は自分の手が緊張して冷たくなっていたことを知った。
たぶん、相澤は不安になっている私に気づいていたんだろう。私の緊張を解すように「病院に運ばれた時には意識ははっきりしてた。……きっと、大丈夫だから。」と言ってくれた。
その言葉を聞いて、涙がじわりと溢れてきた。
相澤にそんな優しい言葉をかけてもらうのは慣れてなくて、なんだか落ち着かない気持ちになってしまう。
「お医者さんが……『きっと大丈夫』なんて言っていいんですか?」
とつい口にしてしまっていた。