アイザワさんとアイザワさん

「あぁ……ほんとに全部思い出したんだな。」

そう言った相澤はほっと安堵したような表情を浮かべていた。きっと、相澤もここ数日過去に揺り動かされている私のことを心配してくれていたんだなと思った。


私はふと疑問に思ったことを聞いてみる。


「どうして『相澤』なんですか?」


水元先生の息子さんなのに。
記憶を思い出してから、それがいちばんの疑問だった。


そんな私の言葉に苦笑いを浮かべながら相澤は言った。

「うち、両親が離婚してんだよ。母親に引き取られたから『相澤』。母方の姓なんだよ。だから元々水元医院にいた時も『相澤』だったんだ。」


「お前、翠さんのことばっかりでどうせ俺たちに興味なんて無かっただろ?」


確かにあだ名は知ってたけど、二人の名前は知らなかった……


「『水元』の子どもなのに、『相澤』だとおかしいだろ?だからスタッフが気を遣ってあだ名をつけてくれたんだ。『若』と『レオ』なんておかしな名前で呼ばれるようになるとは思わなかったけどな。」


「患者さんの前だとちゃんと名前で呼ばれてたけど……お前はデイサービスにしかいなかったからな。」



そうだったんだ……分かってしまえば簡単なことだった。

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