アイザワさんとアイザワさん

帰り道、私達はどちらからともなく手を繋いだ。

柔らかな手の感触に、心がほっとする。


「相沢?」


私はまた涙を流していた。
悲しいからではなくて、安心したのだ。
源ちゃんが大事にならなかったことに。
無事で生きていてくれたことに。


そしてこうして「安心しただろ」と言って隣で優しく手を繋いでくれる人がいてくれた、ということに。



「……ほんとは泣き虫だったんだな。お前は。」


相澤は顔をのぞきこんで、そっと手で涙を拭ってくれた。


そうかもしれない。
だって、今まではここまで心をさらけ出してもいいと思った人なんていなかった。



でも、それを言うなら相澤だってたぶん泣き虫だ。何度か泣きそうな顔をしているのを見たことがあるし……それに。


「相澤……店長だって泣き虫でしょ。私、知ってるんですよ。店長の泣いた顔。」


「は?俺がいつお前の前で泣いたんだよ。」


今なら話してもいいかもしれない。私があなたの頬にキスをしたのは涙を流していたのを見てしまったからだ、ということを。


あの時、キスした『理由(りゆう)』はどうでもいいと相澤は言っていたけれど、私は涙を流していた『理由(わけ)』を知りたいと思った。

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