アイザワさんとアイザワさん
5年前に母が再婚した。
新しい『家族』とは一緒には住まなかった。俺たちは今まで住んでた家に二人で住むことにして、母とは離れて暮らすことになった。姓も『相澤』のままにした。二十歳を過ぎていたし、……一緒に住みにくい事情もあったからだ。
母は近くに住む叔父に様子を見るように頼んだのか、ちょくちょく叔父さんが家に来るようになった。
母が再婚したのは、12月。
12月はなんだか嫌な季節だ。後悔することばかりが起こる。
10歳のクリスマスの日、リビングに足を踏み入れて両親とちゃんと話をしていれば……
母が再婚した時に、逃げずに新しい家族ときちんと向き合っていれば……
俺はこんなに中身のない人間にはなってなかったんじゃないのか?
そして、夢も希望もあるちゃんとした人間だったら、好きな人にもちゃんと想いを告げることができたんじゃないのか?
……そう思うんだ。
空っぽの俺には、彼女の存在は眩し過ぎる。
眩しくて見えないから、手を伸ばすこともできない。ただ見つめていたいと必死になるだけだ。