アイザワさんとアイザワさん
「母さんと一緒だったからな。受け取らないわけにいかないだろ。」
箱を開ける。中にはライターが入っていた。
「うわ、zippoじゃんか。いいな。俺、これだけだぜ。『お兄ちゃんは、本好きだもんね』なんて言われてさ。」と言いながら目の前で金属でできた栞をひらひらとさせて言った。
愛されてるねー。そう瞬に言われてまたため息が出る。
母の再婚相手には、俺たちより10歳年下の子どもがいた。
義理の妹に当たる……裕美は、どうやら俺のことが好きらしい。多少我が儘で強引なところにうんざりしているのだが、なぜか親父たちには俺のほうからちょっかいを出した、と思われている。
今日だって、強引にボランティアの約束を親父に取り付けていた。
何であいつは義理の母親の元夫と仲良くできるんだよ……
「裕美に余計なこと、言うなよ。」
瞬に釘を刺す。裕美にばれたらいろいろと面倒なことになる。
「そう思ってるんだったら、中途半端に裕美に優しくすんなよ。はっきり『好きじゃない』って言ってやれ。」
瞬の言うことはもっともだった。
俺は面倒なことから、ただ逃げている。
はっきり言わないとな……