アイザワさんとアイザワさん

結局、俺はこの時のことを4年経った今でも後悔することになるんだ。


あの時俺が

翠さんの状況をきちんと伝えていれば、


『行かないでくれ』と口にしていれば、


君から翠さんを奪ってしまうことは無かった。



翌日、翠さんが家からいなくなったと知らせを受けた。

医院でも、手の空いているスタッフが探しに行った。


頼むから、無事でいてくれ……


しかし、その願いは届かなかった。


知らせを受けて、俺は顔から血の気が引いていくのがはっきりと分かった。



……俺のせいだ。



『医師』としての責任を果たさなかった俺は、それから『医師』として患者の前に立つことができなくなった。



……これが、4年前の俺の記憶の全てだ。



そんな俺を見かねて、叔父さんが自分の仕事を手伝ってくれと声をかけてくれた。

コンビニや経営の仕事は思っていたよりも楽しく、やりがいを感じるようにはなったけど、あの日の後悔は消えずにずっと心の中に残ったままだった。


やがて君に会うチャンスが来た。


駅前店で働きたいと言った俺に叔父さんはあまりいい顔をしなかったけど、生方さんにも事情を話した上で、彼女には手を出さないこと。

そんな約束をさせられて、俺は4年ぶりに相沢 初花に会った。

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