アイザワさんとアイザワさん
「恐れ入ります」
12月。①伝えてもいいですか?
ゆっくりと、ゆっくりと一言ずつ、噛み締めるように語るその言葉を私はただ黙って受けとめていた。繋いだ手は時々震えて、後悔している気持ちを感じさせた。
やがて、話し終えると相澤は静かに手を離した。
「『許してくれ』なんて、もう言えないよな。俺は自分の気持ちだけでお前に近づいて、心も……身体も傷つけた。」
「謝る資格もない。記憶も戻ったから側にいる理由も無くなったんだ。支えるどころか、俺の存在はお前を傷つけるだけだってことがよく分かったよ。……もう近くにいるのはやめるよ。」
「えっ……?」
どういうことなの?近くにいるのを……やめる?もう私の側にいてくれないの?
驚くだけで次の言葉が続かずに、相澤のほうを見る。
「年が明けたらすぐ移動できるように叔父さんに頼むから。俺のことを嫌いになってもいい……だけど、それまでは我慢してくれ。」
そう言われてしまった。
私が涙の理由を聞こうと思わなかったら、相澤はこのまま私の側にいてくれたのかな……
だったら、理由なんて知りたくなかった。
私はいつもは人の気持ちに敏感なほうなのに、肝心な時に考えが足りないんだ。
きっと……後悔している気持ちを無理やり思い出させて……傷つけてしまった。