アイザワさんとアイザワさん
さっきまでは近づいたと思っていた距離が離れてしまったのをはっきりと感じた。
私のことを好きだと言ってくれたから。
側にいて欲しいから知りたいと思ったのに。
ほんとに私達は一緒にいると傷つけ合うことしかできないんだろうか?
だったら、このまま離れたほうがいいの?
お互い過去の痛みを見なかったことにして……
***
帰り道、車内で私は答えの出ない疑問をずっと繰り返していた。
相澤も何も話さない。
無言の車内の空気は息苦しかった。
相澤の中では既に答えが出てしまっている。
今私が何か言っても、たぶん何も伝わらないと思った。
彼の心に届くくらい強い言葉で話さないときっと何も伝わらない。
自分の気持ちに答えを出せない私には、そんな強い言葉なんてひとつも浮かばなかった。
やがて車はアパートに着いた。
「今日は……ありがとうございました。」
こんな事くらいしか言えない自分が情けない。
「もう…病院には連れてってやれない。源次さんにも会わない。相沢のほうから『お世話になりました』って伝えてもらえないか?」
相澤はそれだけ言うと、私が言葉を返す前に車を走らせた。
「さよなら」とはっきり言われたような気がして、胸が痛んだ。