アイザワさんとアイザワさん

「でもね、『家族』は自分の意思でどうにもできないものばかりじゃないの。私は善ちゃんと出会って、こうして玲が生まれた。私は自分で好きな人と新しい『家族』を作ったわ。大切な人と一緒にいたいと思ったからよ。『家族』はね、造りあげることだってできるのよ。……壊れたって何度でもね。」


「『家族』になりなさいってのは極端かもしれないけど、一緒にいてもほんとうに傷つけ合うだけなら、最初から惹かれなかったと思うの。二人でいたらそこから何か生まれるものが、きっとあるはずよ。」



相澤さんと一緒にいたい……初花ちゃんはそう思ったんでしょ?きっとそれが答えなんじゃないのかな。鞠枝さんはそう言って微笑んだ。



何度もとりとめのないことばかりを考えて頭の中がぐちゃぐちゃになっていた私にとって、鞠枝さんの答えはとても簡単で、単純なものだった。


そのシンプルな結論は、私の胸まで真っ直ぐ届いて、すっ、と心の深い所に落ちて解けていった。


「心のままに行動しなさい。って言ったじゃない。初花ちゃんが『新しい恋』に踏み出すタイミングは今だと思うんだけどなぁ。」


……そっか。もう答えは出てたんだ。
どうして私はいつも考えこんでしまうんだろう。こんなに簡単な想いだったのに。


長い間忘れていた感情だったから、気づくことができなかったし、気づいていても名前をつけることができなかった。


私の中に芽生えたこの感情は……『恋』だったんだ。


私は、相澤 樹が好きなんだ。
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