アイザワさんとアイザワさん

12月23日。
今日は茜さんと一緒に朝日勤に入る日だった。
私は夜勤明けの九嶋くんに近づくと、そっとクラフト紙でできた袋を置いた。


「相沢。メール見たぞ……何だよこれ?」


「ワイロ。」私は一言だけ答えてニヤリと笑った。

袋には、星の模様が散りばめられている。
端には『Milky Way』の文字。
中には志帆さんご自慢のパンがぎっちりと入っている。


袋を開けて中身を確認した九嶋くんは、
「……うまそうだな。ま、今回は協力してやるよ。」と言ってくれた。


「サンキュー、九嶋くん。愛してるよ。」


そう言った私に、九嶋くんは「そのセリフは明日まで大事に取って置きなさい。」とからかうように言った。


ドナドナの同士、九嶋くんとは……実はいちばん長い付き合いだったりする。


彼はコンビニに入ったのが私より半年早く、歳は私の2つ上で鞠枝さんと同じ歳だ。美容の専門学校に通っていたのに、何故か美容師にならずにコンビニに残り、夜勤専門の人になってしまった。


オープンで親しみやすい性格だけど、私生活はいろいろと謎なオトコだ。


私は、九嶋くんにある頼み事をした。
『Milky Way』のパンはその見返りだ。

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