アイザワさんとアイザワさん

「あなたたち、付き合ってなかったの?ほんとうに??」

カフェスペースのテーブル席に座り、私が話を終えると、茜さんがこう驚きの声をあげた。


茜さんには散々心配をかけたので、私の決心をちゃんと話しておきたかったのだけど……
過去のことまで含めて色々と話したのに、茜さんが驚いたのは『私達が付き合っていなかった』ということだけだった。

そこにしか茜さんの『興味』はなかったんですね……


『Milky Way』に連れてきたのは、失敗だったかもしれない……。


ちらっとカウンターのほうを見ると、陽介さんが『何も聞いていませんよ』とでも言うように、わざとらしく澄まし顔で首を振っていた。

……この人は、やっぱりただの穏やかなお兄さんではないと思う。


「茜さん……声、大きいです。」


私が言ったのを聞いて「あら、ごめんね。」なんてあっさり謝った茜さんだったけど、その声もなかなかの大きさだった。


……なんだかそんな所も鞠枝さんにそっくりになってきたみたい。



陽介さんにも聞こえちゃったみたいだし、まぁいっか、と開き直る。木村くんがいない日で良かった……と思いながら。
< 177 / 344 >

この作品をシェア

pagetop