アイザワさんとアイザワさん

「私、もう悩むのやめました。明日で終わりにします。もうみんなに迷惑はかけません。だから……うまくいったら、祝ってください。ご飯でも、飲みにでも行きましょうよ。」


以前の茜さんは、私たちスタッフと一線引いた付き合いをしていると感じていた。でもそう思ったのは、たぶん自分も距離を置いた付き合いをしていたからだ。


茜さんは『もうそういうのはやめた』とはっきりと私に言ってくれた。私が苦しかった時には励ましてくれたし、距離を縮めようとしてくれた。私もそれに応えたいと思うから。


「……じゃあダメだったらどうするのかな?」


私が明日何をするのか察したらしい茜さんは、ニヤニヤと笑いながら、ちょっと意地悪な顔つきで聞いてきた。


「じゃあ、慰めてもらいたいんで……やっぱり飲みに行きましょうね。」私もニヤリと笑いながら言った。


あら、どっちみち飲まされるのね、と茜さんは楽しそうに笑った。


そして目を合わせて笑い合った。
私たちは、同士だ。


***

茜さんと別れた後で私は駅前に出て、バスに乗った。


行き先は市内の総合病院。
今日は、どうしても源ちゃんにも会っておきたかった。
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