アイザワさんとアイザワさん
パタン、と閉じるのです。
「で、その新しい店長さんは『超』が付くほどイケメンだったワケね?」
金曜日シフト終わりの夕方に、私は鞠枝さんと「Felicita」で早目のディナーを楽しんでいた。
つい先日まで悪阻に苦しんでいたのが嘘のように、鞠枝さんのお皿から次々に食べ物が消えていく様子を私は驚きながら眺めていた。
「ほんと、つい先週まで大変だったのよー。水分だって、飲めた!と思ったら、次の瞬間には噴水のように口からドバッ!って出ちゃうんだから。トイレとお友達だったわよ。 」
「すいません……鞠枝さん……食事中にその話題は……」
周りのテーブルの人がチラチラとこちらを見ているのが見える。……すいません。
あら、ごめんね。なんてあっさりと謝る鞠枝さん。彼女のさばさばした性格は好きだけど、こういう場合はほぼ、マイナスに作用する。
「で、もうすっかり大丈夫だから。引き継ぎ後でも体制が整うまで手伝うわ。」
「それは凄くありがたいんですけど、仙道さん怒りませんか?」
……もともと仙道さんが原因なんだけどね、と内心思いながらも一応言ってみる。
「いいのよ。元々善ちゃんが悪いんだから。」
よしちゃん?あ、仙道さんの名前って義明(よしあき)さんだった。